Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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やぎゅうつきかげしょう

柳生月影抄 名作短編集(二)

吉川 英治

Lisez 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 173 309 caractères · 352 écrans

Aozora Bunko

「母君には、秀吉が留守の間も、お達者でおられたか。御機嫌はよいか」

「おすこやかにいらせられまする」

留守居衆の一人、小出播磨守が答えると、

「女房どもは」

「お変りものう」

「そうか。いやそうか」

猿殿は、それを聞いて、長途の疲れも忘れた面持であった。

「すぐ、湯殿へ通ろうか。この態――この戦い窶れのまま、母君のおん前へ出ては、どこぞ体でも悪いように、母君がお案じなさろうで」

戦場では、さして気づかなかったが、平和な城のお住いへ来てみると、猿殿のお声は、話よりも大きく、どこまでも聞えてくる。

大廊下をずかずかと、曲りかけられたが、急に思い出されたように、

「武蔵守、武蔵守」

お台所御用人、三好武蔵守を呼びたてて、

「食うぞ、食うぞ、きょうは兵どもも。炊事方、やっておるか」

「致しておりまする」

「まだまだ、後より続々と到着するが――」

「薪と大釜のあらん限り炊いでおりますれば、御人数分は」

「たのむぞ」

「畏れ多いことを」

「久しゅう、戦場では、脂物に飢えておる者ばかりじゃ。なお、行くてには、より以上な大難関が待っておる。魚鳥の肉など、ある限り城下より集め、足軽の末にまで、ふんだんに与えてくれい」