Classici giapponesi con furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(一)
吉川 英治
Leggi 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 231.525 caratteri · 463 schermate
七
わたくしのお師匠様は、弱いけれど、悪い人間ではありません」
武蔵に捨てられても、その武蔵から離れられないで、遠く見まもりながら、彼は今般若野の沢の上にあたるところへ来て、ぺたっと坐っている。
仮面も笠もそばへ置いて、
「――八幡さま、金毘羅さま、春日の宮の神さま達! あれあれ、お師匠様はだんだん敵の前へ歩いてゆきます。正気の沙汰ではありません。かわいそうに、ふだん弱いものですから、今朝からすこし気が変になってしまったんです。さもなければ、あんな大勢の前へ、一人で向ってゆくはずはありません。どうか神さま達! 一人のほうへ助太刀して下さい」
百拝、千拝、その城太郎こそ気が変になったように、しまいには声を揚げて繰返すのであった。
「――この国に神様はいないんでしょうか。もし卑怯な大勢が勝って、正しい一人のほうが斬られたり、正義でない者が存分なまねをして、正しい者がなぶり殺しになったりしたら、むかしからの云い伝えはみな嘘ッぱちだといわれても仕方がありますまい。イヤ、おいらは、もしそうなったら神さま達に唾してやるぞ!」
理窟は幼稚であっても、彼の眸は血ばしっていて、むしろもっと深い理窟のある大人のさけびよりも、天をしてその権まくに驚かしめるものがあった。