Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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みやもとむさし

宮本武蔵(一)

吉川 英治

Leggi 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 231.525 caratteri · 463 schermate

Aozora Bunko

せめて、死に顔のみぐるしくないように、念仏でも唱えて、静かに、生死の境を噛みしめておくがよい」

――それなり草履の音はピタピタと彼方へ消えてしまった。武蔵も、それきり喚かなかった。彼にいわれたとおり、大悟の眼をふさいで、もう生きる気も捨て、死ぬ気もすて、颯々と夜を吹くかぜと小糠星の中に、骨の髄まで、冷たくなってしまったもののようであった。

……すると、誰か?

樹の下へ立って、梢を仰いでいる人影があった。やがて千年杉に抱きついて、一生懸命に、低い枝の辺までよじ登ろうとするのであったが、樹のぼりに妙を得ない人とみえ、少し登りかけると、木の皮と一緒に辷り落ちてしまう。

それでも――木の皮より手の皮がすり剥けてしまいそうになっても――倦まず屈せず、一心不乱に繰返してかじりついているうちに、やっと、下枝に手が懸り、次の枝に手をのばし、それから先は、難なく、高い所まで登ってしまった。

そして、息を喘りながら――

「……武蔵さん……武蔵さん……」

武蔵は、眼だけまだ生きている髑髏のような顔を向けて、

「……オ?」

「わたしです」

「……お通さん? ……」

「逃げましょう。