후리가나로 읽는 일본 고전
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したやそうわ
下谷叢話
永井 荷風
永井 荷風의 下谷叢話(したやそうわ)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 122,971자 · 246화면
毅堂は雪の夕わが家の門を鎖され、ここに翻然として志を立て蔭ながら母を拝して直に東遊の途に上った。かくて毅堂は元治元年四十歳の時、暫時帰省するの日まで、凡二十年の間慈母の面を拝することができなかったのである。
毅堂の母は丹羽郡赤見村の豪農磯貝氏の女で名を貞とよばれた。毅堂は生涯深く母の恩を感じ、晩年雪を見るごとに子弟門生に向ってその身の今日あるを得たのは、母のよく情を押えて雪夜家に入る事を許さなかった故である。もし慈君の激励に会わずばその身は碌々として郷閭に老いたのであろうと語っていた。これは下谷の鷲津氏の家について聞き得たことである。
往昔儒教の盛であった時代には、人は教訓を悦び美談を聴くことを好んだ。古人は事に臨んで濫に情を恣にせざる事を以て嘉すべきものとなした。喜怒哀楽の情を軽々しく面に現さないのを最修養せられた人格となした。今日はこれに反して情を恣にする事を以て人間真情の発露を見るものとなし、たまたま情を押えて忍ぶものあれば、目するに忍人を以てせんとするが如くである。江戸先哲の嘉言善行にして世に伝えらるるものは既に鮮くない。鷲津毅堂母子の逸事の如きは特に記すべき価なきものかも知れない。