후리가나로 읽는 일본 고전
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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
国枝 史郎의 蔦葛木曽棧(つたかずらきそのかけはし)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 335,908자 · 669화면
ただ二張りの高提灯が式台脇に立ててあって、佗しく点もる灯の光が四辺を照らしているばかり。若侍の影さえもなく、間ごと間ごとの灯火さえ悉く消されて真暗である。
邸内に人はいないのかも知れない。世間の噂にあるように主君よりの討手を引き受けて華々しく合戦をするようなそんな気振りは毛ほどもない。それどころかどうやら甚五衛門は、自分の邸を空け渡して中津の領地へ引き揚げたようだ。
つまりそれほど静かであった。
しかし決して甚五衛門は逃げも引き揚げもしなかった。彼は今宵も常と変わらず自分の室にただ一人で端然と坐っているのであった。
妻は昔にこの世を去り、爾来妾さえ蓄えず鰥暮らしの気楽さは邸内に女の数も少ない。足手纏いのないということは、今度のような事件の場合に彼の行動を自由にさせた。彼は自分の思うがままに振る舞うことが出来るのであった。
一架の短檠に室を照らさせ朦朧と四辺の暗い中に平素の衣裳を着けたまま彼は端然と坐っている。一切の苦悶を解放して安心立命した人のように彼の容貌は朗らかである。恐ろしい主命をもたらせた上使が乗り込んで来るという事も、主命を奉じないその場合には彼の生命を奪おうとする討手の大衆が城の門から、上使と一緒に出たという事など、夢にも考えていないかのように彼の態度は沈着であった。