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おおおかえちぜん

大岡越前

吉川 英治

「日光」1948(昭和23)年9月~1949(昭和24)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 218,436 字 · 437 页

青空文庫

色気の方だからな」

「ふウむ……なるほど……」

同僚のなかでも、兄弟以上にも、親しくしている間なので、市川義平太は、小林勘蔵の机のうえをのぞいて、そこらの書類を、手にとって見た。

江戸じゅうの隠し売女(私娼)の統計やら、身元分けやら、宿の調査などだった。

中に一通、享保初年調べの、江戸の人口表もある。

それによると、いま、江戸の総人口は、

――五十万一千四百四人

と、いうことになっており、男女に分けると、

(男)三十二万三千二百八十五人

(女)十七万八千百十九人

の分類になる。

「小林。この表は、ほんとかな。余りに、男の数が、女に比して、多すぎるじゃないか」

「いや、その表は、市民だけの数だから、大名の家中、お抱え町人、能役者、その他、参覲の各藩邸の者をいれると、どうして、とてもとても、そんな数ではない」

「もっと、男の数が、多くなるわけか」

「もちろん、江戸詰の諸大名の大家族は、ほとんど男ばかりだからな」

「そうかなあ。そんなにまで、江戸の男と女の数が、片ちんばだとはおもわなかった。――なるほど、これでは、女飢饉から、いろいろな犯罪が、のべつ起るのも、むりはないな」