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おおおかえちぜん
大岡越前
吉川 英治
「日光」1948(昭和23)年9月~1949(昭和24)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 218,436 字 · 437 页
心契の人々
しかし、左右太と同室のごく親しい人々のあいだでは、
「どうして、このところ急に、あんな自暴のやん八になったのか」
と、不審がられもしていた。
越前守は、そんな中を、定例の辰の口評定所の出仕日とあって、午すぎ、駕籠内の人となって、つねより早く奉行所の門を出た。
心契の人々
たそがれと共に、役宅は退けて、宿直部屋の灯と、牢舎長屋のほかは、墨のように、とっぷり暮れ、大門も西門も通用口も、みな閉まった。
小林勘蔵と市川義平太のふたりは、たれより晩く、そこを出て来た。
ふたりは、立ちどまって、
「では、義平太。貴公ひとりで行ってくれるか」
「その方が、人目にたたないで、いいとおもう」
「では、たのむ」
「いずれまた、役宅で、何かと、そッと連絡する」
勘蔵は、自宅へかえり、義平太ひとり、あとにのこった。
その義平太は、もう夕暮と共に、葭簀を巻き、戸を卸してしまった石焼豆腐の住居の横へまわっていた。
「お次さん。おるかね」
「オ……。市川さま」
「さっき、左右太が、立ち寄ったろう」
「ええ、お寄りになりました。そして、あなた様がお見えになったら、これを渡してくれと仰っしゃって」