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おおおかえちぜん

大岡越前

吉川 英治

「日光」1948(昭和23)年9月~1949(昭和24)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 218,436 字 · 437 页

青空文庫

……だから、自分たちの若い力では出来難いことを、越前守様に、やりとげていただかねばなりません。その同じ気持から、左右太、勘蔵、義平太の三名は、かたい約束をむすび、志のうえにおいて、義の兄弟ともなったのです。お父上、御安心ください」

「けれど、もし、そちたちの手で、事件の一味を縛め捕ったら、これや当然、越前守さまの過去が、白日に出ることになる。……そんな馬鹿をやってどうする」

「では、お父上のお考えは」

「知れたことじゃ。汝等、浪人して、賊の五名を、斬ッちまえ! どうせ、白洲となっても、獄門と極まっておる奴らではないか」

「だめです。その策は」

「なぜじゃ」

「その考えは、初めに、私たち若者が、すぐ思いついたことですが、越前守様には、断じて、おゆるしになりません」

「なに、大岡どのが、ゆるさぬ。――では、大岡どのは、そんな死罪の賊のいのちと、自身の大事な身とを、取り替える気でおられるのか」

「そう単純なお考えでもありません。――越前守さまのお覚悟は、御自身も、裁かれることを、望んでおられ、いかに遠い過去の過ちでも、自分のなした罪にたいし、苦しむだけ苦しもうと、敢て、天の処罰を、身に待っておられまする」