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おおおかえちぜん

大岡越前

吉川 英治

「日光」1948(昭和23)年9月~1949(昭和24)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 218,436 字 · 437 页

青空文庫

瓦版

「その、貰い子の実家先は、何といったか、訊かなかったか」

「あの……秋田淡路守様の御家来で、今村要人とかいう人ですって」

「では、間違いなしだ! ……。お次さん、おまえの姉だといって、いつぞや家へ帰って来た島破りのお島は、いま、越前守様の苦悩の中心になっているあのお袖という女と、実の姉妹だぞ」

「えっ。ほ、ほんとですか」

「そなたとは、ただ、名だけの、姉妹にすぎないが、お袖とは、血もひとつ、両親もひとつの、真実の姉――妹だ。お袖は、お島の妹だった」

「どうしてそれが分りましたの」

「仮吟味のお白洲で、お奉行が、調書の表からそういったのだ。おれも愕然としたが、お袖もそのとき、びくっと顔をあげた。おそらく、自分にそんな姉のあることなんか知らなかったに違いない」

「まあ」と、お次は、ありッたけな瞼をみひらいて、心の驚きを、左右太の顔へ映しながら――

「どうしましょう。それでは?」

「どうしようかって? ……何を」

「そのお島姉さんが、また、使い屋に手紙を持たせて、どうしても、もう一ぺん、お前に会わなければならないことがあるから、三叉の菖蒲橋まで私に来てくれといってよこした……その返辞を」