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おおおかえちぜん
大岡越前
吉川 英治
「日光」1948(昭和23)年9月~1949(昭和24)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 218,436 字 · 437 页
吉宗には、かれが、何のつもりで、それを求めて来たか、すぐ越前の腹が読めた気がした。
(おそらく、職にある日のうちにと、今生の別れを、それとなく告げに来るものであろう)
こう察したので、かれはいよいよ一刻もすておけないと考え、老中を通じて、事の善処を、急命したのである。内意の要点は、
一、評定所は、越前の持ち出した裁判を、取り上げないこと。
一、問題は、南町奉行の権限において、一切、解決し去ること。
一、北町奉行は、南にたいする対立を抑止し、南と協力して、この際の臆測や風説を解くに努めること。
――などの三ヵ目であった。
板倉伊予守は、以上のいきさつを、諄々と、語り終って、
「そこで、われわれどもの談合は、北町奉行の中山殿や、折ふし、寺社奉行の牧野殿をたずねて、宇治より入府中の鉄淵禅師を加えて、昨夜、深更まで、協議をこらした次第でした。……その結果、かくまで御憂慮あらせらるる上様のお心になって、一同、いかようにも、あなたの御方針にそい、この際の御苦境と難問題の解決に、各、力をかし合おうということに一致し――昨夜申し合せた者一同、ここに、貴殿をお待ち申した次第でござる。