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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

07 第七分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 页

青空文庫

ここ久しく会わなかったが、光秀はこの大医と、安土の城内でいくたびか同席したことがある。そのうち二度ほどは茶席であった。信長は、茶の相手にもよく彼を招いたが、病気といえばすぐ、

(道三を呼べ)

と、いうのが寝つくよりも先で、常に左右にいる典医よりも、彼への信頼のほうがはるかに篤いようであった。

けれど道三は由来、権者に召し抱えられるのは好まない質だし、住居は京都にあるので、そのたびごとに安土まで通うのは、いくら丈夫といってもなかなか有難迷惑のようであった。

光春は小屋まで行かずに戻って来た。急に天野源右衛門が呼び返しに来たからである。

源右衛門は小声で、

「どうも、まずいお人に出会うてしまいました」

と、歩みながら囁いたが、光春はやがて曲直瀬道三のすがたを見て近づくと、むしろ僥倖のように、

「これはおめずらしい。一渓老ではありませんか。いつも壮者をしのぐばかりなお元気。きょうは京都からお登りでしたか。何か、御遊山のお連れとでも?」

などと日頃の親しみを示して、光秀との話の仲へ立ち交じった。

はなし好きな道三は、この山上に思わぬ知己を拾って、いとど愉快そうに、