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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页
濶い雪の曠野には、風をさえぎる何物もなかった。そういう吹雪に明け暮れて、彼らの草小屋は今にも吹きたおれそうであった。一夜中吹きこんだ粉雪は、夜が明けると、まるで彼らを雪の野原に埋めていた。
それが、農夫になろうと決心した彼らの最初の越年であった。何から手をつけてよいかわからない彼らは、夕暮れになると、必ず烏の鳴きごえを聞いた。その不吉な鳥だけが後を慕ってやって来ていた。
この同じ地つづきと云うならば、事態はここよりも善かろうと考えられないのだ。そしてもはや夏になっていた。駈け足でおし寄せて来る秋――ある朝目ざめて見れば一面のまッ白い冬。それもそんなに遠い日ではない。
今や彼らの手もとには、この冬を凌ぐべき糧食の貯えもなくなっていた。どんなによい地味であっても、冬にみのらせることは出来ない!
彼らは習慣によって頭を低げた。けれども満足してあげることは出来なかった。言葉の意味を考えて、その真意に思いあたるとちょっと蒼ざめた。聞きちがいではないか。――そう思って、ランプのもとの邦夷を見つめた。知らず知らずに彼らの瞳はかがやいているのであった。
邦夷もまたそれを感じた。