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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页
として相当額の金子の貸付けを開拓使に承諾させること。
あの土地にはいって、さしあたりの自給自足が出来るまで少くとも三カ年を要すと見積る。その間を喰いつなぐ米塩の用意であった。つくられるべきわれらの新たな聚落を、すべての口数を――老若男女取りまぜて、三〇〇と見れば、千五百石は貯えねばなるまい。この金額を本年の東京相場に換算すればざッと九千円――ぎりぎり一万円と計上した。主君邦夷にあたえられる六十五石なぞは問題にならぬ。家禄城地を召しあげられた当座の動顛のうちに、とぼしい藩庫は空々になっていた。特別の憐愍によって個人の所有に残された家財道具も、かねめのものはこのたびの旅費に消えていた。刀折れ矢尽きた思いであった。なお生きようと考えるなら相手の武器を奪って、それで身を守るよりほかに方法はない。即ち彼は、云わなければならぬのだ――おん身らまことに開拓の急務を願うなら、この一万円を即刻投げだせ、庶民の幸福を思う政府であり、おん身らがその政府員と云うならば、開拓の先達たらんとし、身をもって北門警備の鎖鑰たらんとするわれらを見すてることは、天、人とともに許されまい、われらにとっては起死回生の――