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いしかりがわ

石狩川

本庄 陸男

「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页

青空文庫

――殊にこういう土地柄では聞かされても聞こえないふりをした。「奉行は何をしている?」と云いたくなる。事実、だれかもそれを口にした。政府の取り締りによってこの妨害を除こうという考えであった。それが、支配者であるというものの第一の仕事であろうが――と談じこもうと敦圉いた。

「しかしこれは――」と彼らの一人である関重之進が考えぶかく俯向いて、顔をふりながら云った。局面をうち開くために、ふだんは居るか居ないか分らぬほど目立たぬ人にも創意が湧いて来たのだ。彼は一語々々を区ぎって、すぼめた唇の先で必要な言葉だけを吐きだした。「自分、考えますのに、われらの力で防ぐよりほかに致しかたもございますまい、作事場のあいだに見張り小屋を設けて、三四人交替に不寝の番をつかまつる、手にあまれば――」

彼はそこでちょっとだまった。あとの言葉は云わなくても判ったものであった。けれどもまた彼は云った。思わせぶりに沈黙したのではない。事態を一目に瞭然たらしめるため適当の言葉をさがしていたのだ。

「うむを云わさず一刀両断、これ、天の成敗じゃ――万にひとつ、そのために後日にいたって悶着など起きたならば、そのときこそは不肖関重之進、惜しくもないこの老骨、りっぱにお役に立てまする――立派だとも――鍬をふりあげたり、鋸の目を立てたりすることよりは、必ず