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いしかりがわ

石狩川

本庄 陸男

「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页

青空文庫

彼は眼をほそめた。

柱や足場の間から人々がこちらを見て手をあげた。五間に十二間の長い一廓を遠巻きにして直接関係のない人々も群れていた。聚落から来た家族であり、街にすむ老幼男女であった。

梁の上に板をならべ、南東の方向に面した祭壇に供物が盛りあげられている。榊の代りには水松の小枝を用い、白いご幣が、黒いほど濃い緑葉のなかに清洌な対照であった。

烏帽子をかぶった神主姿の男は棟梁の知人のなかから捜しだして来たものであった。それで間にあうのだ。棟梁と呼ばれている三谷三次がたたき大工であっても構わないのだ。この界隈の、まだ全く未成熟な住民の気ッ風にあわせて、その限りで納得の行くことをやってのければよかったのだ。

明日がどうなろうと、たらふく食いたらふく飲むことであった。それは一皮むけば、えぞ三界まで流れて来た職人どもの啖呵なのだ。大工の三谷三次は「かしら」を連れて来た。工事の下まわりを指図するというのであった。そしてその二人だけが、今日のために、紺のにおう新しい法被を着て待っていた。

そこに阿賀妻らはあがって行った。

棟木のうちあげがはじまった。その間、ながく低く吼えるような木遣り歌であった。