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いしかりがわ

石狩川

本庄 陸男

「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页

青空文庫

辛うじて許可を得たその土地では開墾の見込みが立たなかった。前の年の経験が痛々しいのだ。携えて来た種子は何ひとつ実らなかった。風土の変化ばかりではない。赭い土はざらざら手から洩れ、冷たい風が終日海から吹きあげ、針葉樹も満足に育たないような荒れ地であったから。彼らの顔に浮ぶ不安と動揺は見のがせない。ようやく納得してやって来た最初の年のことなのだ。祖先の地を追い立てられて、こういう方策を取らなければならなかった彼らは、ともどもに哀しい境涯であった。それ故に、一切の将来を政府の誠意に任せて信じていたのだが、これは余りに惨酷な酬いであった。

これでは仕方がない。

しかし、こうしてくれと云う要求も出せない破目になっていた。それもまた、みんな承知している。云わば敗れたものにあたえられた窮命である。にも拘らず、だからどうにかしなければならぬと云う悶えも胸を去らなかった。はじめて知る長い冱寒の雪に埋れてそれを考え、それを相談した。いまだに贖われないほどの罪科を犯した自分らであったろうか。――内心の不平は、思いあまった人々の眼を血走らせるのであった。

それを宥めて、もとの家中の重役にいた阿賀妻は、とにかく、春の来るのを待っていた。