轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页
歯切れのよいその男を後に従えていたならば、商人どもの交渉にも負け目を見せずに済むだろうと思うのだ。ひとの前にいながら、焦点のない視線を随意なところに投げかけ、しわりしわりと瞬いている阿賀妻は、そんな呆けたような恰好で、その実自分にとっては周到な先の先まで思いめぐらし考案にふけっていた。耳にひびいて来る相手の語気によって、礼をうしなわぬ程度には合槌も打っていたが。ときには言葉の意味も聞えていたと見えて、ご尤も――と首をふったりしていた。
「いかがですかな?」と堀は意地わるく追究した、「それでご得心かな?」
「いやなかなか」と阿賀妻は云った。
「なにが、なかなかでござる?」
「うん、それは――」
阿賀妻は瞳をこらしてはじめて堀大主典の眼を見た。そして彼は、唇の端をぐいと引きさげるようにして口をつぐんだ。ようやく目が覚めてあたりの事情が読み取れた――そういう寒むざむしたものを感じたのだ。あやぶまれた税庫の普請も何とか自分らの手で成し遂げつつあった。建前を祝った今日の彼には、九分通り出来あがったと思う小さな安心があった。しかるに相手は明らさまにそれを嗤っていた。