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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页
この地つづきに、云うが如く、考えたような肥沃なところへめぐりあえるであろうというはかないのぞみも、つきつめて行けば、消えてとびそうな願いでしかない。これは落人の姿であった。しかもたたかわない落人であった。危ぶむ思いがきざしたとき、失った死に場所に対する深い悔恨がよみがえる。雲井竜雄が呼びかけた『討薩の檄』はその一例でしかない。まだ起てた。何度でも起つべきであった。そして斬り死にすべきものであった。機会は次々と齎らされていたのに――会津救援には何を措いても駈けつけるべきであったのに――拱手傍観を強いられた彼らは、むざむざと数百の生命を屠らしたではないか。意地はつぶれてしまったのだ。土民のように追い立てられた。首鼠両端を持した藩の重役どもが、今荒野の中に連れ込んでのたれ死に導いている!
えり首がひやりとした。雨の滴くがおちかかったのだ。はっと我にかえった玉目三郎は、思わず大声に呼びかけた。
「阿賀妻どの」
「何でござる」と、彼はふりむきもしないで答えた。
目的に向って余念もないふうであった。すると玉目は、云いたいことも云いそびれた。
「予想のとおり、降ってまいりましたぞ」