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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页
と堀はつづけた、「追って、メリケンから連れて来た教師どもが調査にまいるはずですが――とにかく、こうしてはいられない、馬だ、馬だ」
堀大主典は下役のものに向って顎をしゃくった。
「馬の用意は出来たか、牽いて来てくれ」
彼は、矢立と書類をポケットに押しこんだ。
「これからサッポロにお帰りですか?――」と仕事師はうかがいを立てた。
戸外は暮れていたのだ。
「月がある」と堀は云った。
「お伴をさせて貰いましょう」
「ふン、きさまらと同行したら、何をされるかわからん」
「まさか――だけど、だんな」
「わかっとる、入札はその方どもの自由だ、本府の金穀課が扱うじゃろう」
それでも彼らは黙らなかった。今は公然と顔をよせあつめて私語しあうのであった。この好機を、黒田長官さんの呼吸のかかったという羽振りのよい堀大主典の口添えによって有利にとらえようとする――そういう場合の、あくまで無作法にずうずうしい商人のつら構えに変っていた。
堀は卓の前を行ったり来たりして馬の来るのを待っていた。洋服に草鞋ばき、一本の脇差を腰におとしたといういでたちで両腕を胸に組んでいた。彼の心は、しばらく留守にしたサッポロに向って急いでいた。