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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页
やがて老いて、そして跡目のことも考えねばならなかった。だが、そのとき吹き荒れたあらしの激しさは、足許を崩し、土台を埋没してしまった。時代の移り変りは、古い人間をそれだけ深く動顛させた。養子縁組どころの騒ぎでなかった。個人の事情は消えてしまって、家中は一統に、生きるか死ぬかの進退を即刻定めねばならなかったのだ。
――どうやら生きて行けそうな気がした。戸田老人はぷッと煙管を吹いて吸い殻を岩のうえに転がし、二服目をつめこみながら訊ねた。
「高倉どのはお気の毒なことをしたなア――おぬしもこれからが大変だ、舎弟は幾つになられた?」
祐吉はただうなずいていたが、その言葉は彼の耳を外れてどこかに消えて行った。彼は川っぷちの平べったい石に見惚れていたのだ。日向に白く輝いて、上にはとぐろを巻いた青大将が温っていた。
「十四かな? 五かな?」
「はア?――」
こツんと戸田老人は煙管をたたいた。その音に初めて気づいたように蛇は、鱗に包まれた鎌首をもたげた。小さなまるい眼で高倉祐吉の顔をのぞきこみ、口をあけないで赤い舌をちろちろと動かしていた。
「しッ――」と彼は土を踏みつけた。