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いしかりがわ

石狩川

本庄 陸男

「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页

青空文庫

しかしここでは――未開の曠野にわけ入り、騒々しい新たに人間の往来する土地から、時と場所を隔ててしまったこの一団には、神々の体している意味は甦って導いていた。それを捧げて進むことによって安全なものを感じていたのだ。心を托するに足る何ものかになっていた。

「ともどもに安堵なさって下さるでしょう、それでは」

相田清祐は先導に出た。家中のものが順序によって従った。数歩を距って女どもが続くのであった。

彼らの一隊は出発した。脚はすたすたと急いでいた。高低起伏の幾曲りかを胸で感じて瞼を熱くした。徒歩の足さえ汗ばむのに、彼女らの男たちは、手でもってこれを平げたのである。

最後の坂路を下ったところで、先頭の相田清祐はちょっと歩を停めて後をふりかえった。それを云って人々の注意を喚び起さずにはいられなかった。

「これからが」と彼は力をこめて、「わがトウベツ!」

――これからがわがトウベツ。声は波うって、隊列のしんがりまで伝えられて行った。女どももやって来たのだ。裾をからげ、藁草履を足に結えて、男の足におくれまいと唇を咥えて急ぎながら。そうして眼をあげてはじめて周囲を見まわして、とうとう来た――と、顎ふかく頷いていた。