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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页
にも拘らず彼らは、何ということだ、と、口惜しがっていた。――もしや旧の領主がこの地にいてくれたなら、ここにも県が置かれただろう。彼らの旧主は、万石以上の大名が受けたと同じ待遇で華族に列することも出来たのだ。したがって彼ら家臣の一団も貫属として、昔の家禄をある程度取りもどすことが出来ていたかも知れない。不幸にしてお沙汰に接しないとしたならば、そのときこそ最後の奉公に起たねばならぬと思った。家臣こぞって、主家百年の安泰のため、死を賭してこの情を陳べねばならぬと敦圉くのであった。
彼らの心の中心に坐っているそのひとは蝦夷地にいた。その人がいなければ思いは凝結しなかった。うわさは風に乗って伝わって来る。彼は夷族のはびこる荒蕪地に、求めて移って、難渋の限りをつくしているというのであった。九月に初霜を見、翌る年の六月にならねば霜の終らぬというその土地に、よき実りがあろうとは考えられぬ。そういう土地に、こちらの変化は何も知らず、いたずらに行き暮れているのではなかろうか。それならば、説いて再び呼び戻したい。そしてまた日が経った。思い屈するようなこういう気持は、血縁の深いところに流れよっていた。