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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页
新政府の袖にすがって新しい路をひらいてあげようとした。それをあくまで肯んじないのだ。彼らはそこでひどい損害を受けたような気持になった。意の如くならないものに対する憎しみが湧いて来るのだ。心の底には面白くないものが澱みはじめる。したがってお館は日ごとに閑寂になった。
もとから無口な邦夷は、いよいよものを云わなくなった。そして、置き去りにされたような日々を、山の木を吹き折ったり、野の草をなぎ倒す木枯しの音を聞いて暮した。白く凝り固ったおのれの心が、日とともに透きとおるのを見つめていたのだ。その間に、雪が降って、積って、雪どけが来た。書院の窓に梅が咲いた。やつでの先が伸び、どんよりと黄ばんだ花がついた。池のはたに出ていた蕗の薹がのびだした。空が暈かされて日の影がなく日が暮れた。春がめぐって来たのである。
邦夷は腰をあげた。彼は同族の了意なるものを仙台から呼んで、彼がいるこの家屋敷をそっくり与えた。そして、持って行けない先祖の墓碑をあずけてその祀りをたのんだ。駄馬をかき集めた。使用人はそれぞれ暇をやった。官船の廻漕日の前三日をおいて、それを出立の日と定めた。