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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页
輪を描くように、自分の一家族はお互いの身体を寄せあって、少くともそれだけは肌身の温もりをしっかり感じ合っていたかった。そのためには、別にこれと云う必要もない荷物を周りに積みあげるのである。それから他の家族に眼を向けた。
船室は間に棚を吊して、少しでも多く客を詰めこむため上と下の二段になっていた。邦夷は、その下段の通路に面したほぼ中央と思われるところに座を占めていた。なぜかその場所は、家中の面々を一目に見渡すことが出来る位置のような気がした。三人の従僕が、彼と彼の家族の身のまわりを整えていた。馴れない夫人は、ただ邪魔になるまいとして小さくなっているだけであった。
そして、ようやく吻ッと一呼吸入れたのである。
そこへ、外国風に身じまいをした運用士官がはいって来た。そのあとには二人の水夫が従っていた。彼は一目で邦夷を見わけることが出来た。つかつかと進んでその前に一揖した。
「船長代理としてご機嫌うかがいにまいりました」
「それは恐縮」と、邦夷は下からそのものを見あげた。
「ついては、この下等の席ではあまりにむそうございます故」士官はそう眉をしかめた。
邦夷は目をおとして、泥の落ちている通路を――士官の足もとを見ていた。