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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页
異いつつあった。成熟した大人たちと伍して、肉体の力で相並ぶことが一つの条件になりかけていた。彼らの必要としているのは格式や典礼ではない。山の木を伐ったり、土を掘りくりかえしたり――つまり、これは一人前だ、と、そう認める膂力であった。労働に耐え得る体格であったのだ。その点になれは彼の未熟さは自他ともに欺くことは出来なかった。表面に高倉どのと呼ばれながら、あたえられた八分目の部署にあまんじなければならなかった。けれども、その気組みだけは誰にも劣らぬと思っている。実際また、こういう風に、男たちがいないときには、彼は一人の男として女どもの意見を聞いてやり、ことを解決してやらねばならぬのであった。
「今日か、明日か――」と、彼もつぶやいた、「空模様とも相談して、行って来なければならないだろう」
だが、穴のように低くなった自分の家に一足々々、藁ぐつに踏まれてぎゅッぎゅッと鳴る雪の音を耳にしておりて行くうちに、彼の心は暗くなっていた。光りの徹らぬ小屋のなかには煙が立てこめて、噎せかえりそうにけぶたいのだ。雪をはらって炉ばたに腰をかけると、燃え渋る薪の煙が、風もないのに真正面に吹きつけた。