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いしかりがわ

石狩川

本庄 陸男

「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页

青空文庫

降り積んだ雪の上を、一度ぐらいは自分がまッ先に道びらきしてみたいとも思った。

彼は勇んでいた。身支度をととのえ、早目に午食に腹もこしらえた。これでよし、と外に出た。清冽な雪の原野には、きーンと肌をつき刺す冷気があった。それを胸まで吸いこんで、ふーッと白く吐きだした。すると身体はぴんと張りきった。凛々たる思いであった。

「これは、思ったより楽だ」

「そうでがんす」と鋸屋は太陽を見あげた。

聚落の外れから間もなくは、なだらかな段丘の傾斜になっていた。南にひらけたこの日向の雪には、冬の陽光が、一ぱいの力で直射しているところだ。二月の雪が、陽の熱を吸って幾らかべたついていた。水分を含んだ自身の重さでそれだけ密度をたかめていた。カンジキは浅く浮くのだ。実際、思ったよりも歩き易かった。

「しかもけっこうなお天気さまで――」と、鋸屋は附け足した「こういう日には、山の仕事は目に見えて捗取るものでがんす」

前に行く高倉はさばッさばッと雪を踏みつけた。彼は聞きだすのであった。道も気持ちよく捗っていた。

「おぬしは、山仕事をしたことがあるのか」

「それはまア――見て下さる通りさね」