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いしかりがわ

石狩川

本庄 陸男

「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页

青空文庫

間もなく二度めの家中が来るということは、期待でもあり惧れでもあった。ここにいない夫について、説明のしようも無かったのだ。けれども逢っても置きたかった。夫にも話してやりたかった。その気持が、いつか彼女は、夫の考えで考えるようになっていたのであろう。まだあちらにいた頃足しげく往来していた吉原兵太郎という名前が、咽喉につかえていた。いよいよとなって、ついと飛びだしたのだ。

――春はうす緑の海から南の風を送って来た。そして、日ごとにまぶしくなる太陽が原野の雪をおしつけた、その明るい光りはしんしんと音立てながら降っている。すると、あれほど積っていた雪が、光りの重さに耐えきれないのだ。少しずつ薄くなり、しかし、それだけまた密目も詰めて来た。地上の凹凸が雪の表面にうかがわれた。なお照りつける陽光に、ついに敗れて、じゅン、と、悲鳴をあげた。白い雪の結晶が突然水に変った。それは、その下にある雪にぷすッと浸みこんだ。誘われてそのあたりが透明に溶けた。上からは絶え間なしに陽が降っていた。原野の雪は湿っぽくなり、どこか生気のないどんよりした色になって来た。

だが、夜になるや否や、どっと寒気が戻って来た。