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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

伸子は、モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)で手紙をうけとったときから腑に落ちなかった佐々の家族の旅行の本質を、はじめてつかむことができるように感じた。多計代が、保の分骨を錦につつんで、まるでそこに一人の人が存在しているようにつれて歩き、ホテルの室でもアパルトマンでも特別な置場所を与えていることも、親たち夫婦のこんどの旅行についてのある心持の表現かもしれなかった――保にもパリやロンドンを見せてやっているのだという。――

年をとってから秘蔵の次男に自殺されるというような深い落胆を経験した夫婦の、親として哀切な思いに、幾晩か語りあかして出て来た旅であろうのに、その一行が親も子もてんでんばらばらな性格の向きのまま、それだけは家族に共通な互の強情さでもって、揉めながら日をすごしているのも、佐々の家らしい現実であった。哀傷は、多計代のこころを苦しめ、乾きあがらせ、病的に過敏にしているけれども、それをしっとりと和らげ無慾とする作用となってはいない。どうせ、やがてみんなあのひとのものになるのに、と和一郎の金の話にふれて云ったとき、多計代の声には一つの響があった。