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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
第二章
一
その雑踏ぶりは、伸子と素子とがモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)の停車場で見なれている重くてゆるく大きい混雑より小刻みで神経質だった。伸子たちは駅の前から辻馬車を一台やとった。モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)の辻馬車の座席を低く広くしたような馬車だった。瘠馬にひかれたその馬車は黒い幌からしずくをたらしながら、そのかげから珍しそうに早春の夕暮の雨にけむるワルシャワの市街を眺めている伸子たちをのせて灌木の茂みのある小さな公園めいた広場に面したホテルに二人を運んだ。
伸子と素子とが旅行用のハンド・バッグに入れてもっている旅券には、モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)の日本大使館から出されたドイツ、ポーランド、チェコスロヴァキア、オーストリアに向けての許可が記入されて居り、モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)駐在のポーランド公使館のヴィザがあった。ワルシャワからウィーンへゆき、プラーグからカルルスバードをまわってベルリンには少しゆっくり滞在するというのが伸子と素子との旅程であった。伸子の家族がマルセーユに着くのは七月一日の予定だった。