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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
十八
やっと病棟の廊下をそろそろ歩きするようになった伸子に代って、ひまを見ては素子がその調べのために歩きまわった。こういうことを、伸子と素子とは慎重に二人の間だけの事務にしていた。少くとも、フロムゴリド教授が伸子のカルルスバード行きに賛成して、証明書のようなものを書いてくれるまで。伸子も素子も、いらざるひとに――藤原威夫のようなひとに――二人のこの計画へ手を出されることをひどくおそれた。
十八
いったい、佐々のうちのもの、と言ってもそれは多計代の意志で決定されたものなのだったが、いつの間に、ヨーロッパへ出かけて来ようという計画をたて、その決心をし、船室までとったのだろう。
モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)東京間の電報往復にさきを越されてやっと三月三十日ちかくなってついた多計代からの二度目の部厚い手紙を半分ばかり読んだとき、伸子はそういう疑問にとらわれた。手紙の最後の頁をみると、二月二十一日夜と、多計代がそれを書いた日づけが入っている。素子からのしらせで伸子の病気を知り、胸をうたれ、と言って来た一回目の手紙は、いつごろ出したのだったろう。伸子は枕もとのテーブルから紙ばさみをとって、しまってあるその手紙を出してみた。