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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

二

伸子と素子とは、黒い服を着た須美子をまんなかにおいて、壇の下のベンチに並んでかけていた。左手の弓形窓から、ペイラシェーズの新緑の色が、雨にぬれてうすらつめたい礼拝堂のコンクリート床の上に流れていた。ベンチのかげや、壇のかげや、そこにあるすべての物の影は、長くのびていた。自働パイプ・オルガンの鎮魂の祷りの曲が、悲しみにつつまれながら泣いていない四人の男女のいる礼拝堂の天井に響きわたった。

一時間ばかりたったとき、僧服のような黒いなりの男が素焼の骨壺に納められた子供の骨を捧げて現れた。磯崎がその壺をうけとって、その黒衣の男の案内で礼拝堂の外廊づたいにしばらく行った。寺院めいた柱列のある一つの場所へ出た。丁度骨壺の入るだけの四角さに区切られてペイラシェーズの庭に向った一方の高い大きい壁面の全体が納骨所になっている。中央に、十字架のキリストが飾られている。その前に花束が三つ四つそなえられている。ささやかな花束は、壺を抱いている磯崎にしたがって須美子、伸子、素子がゆく外廊の煉瓦の通路の根がたにも、ところどころに置かれていた。高いアーチ形の天井の真下までアパルトマンの高層建築のようにつまっている四角い箱の壁の、花束のおかれている列の上のところのどこかの一つに、その人が愛したものの骨壺が納められているのだろう。