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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

三

みんなのために頼りになり、役に立たなければならないと思った。みんなの必要が、たとえ伸子としてどう判断されるにしろ、それを批評するよりは実際的に解決してゆく力とならなければならない。それは、この長い旅行をとおして泰造の負担を軽くすることでもある。伸子はそう決心して、マルセーユのホテル・ノアイユの一晩を、早くから横になった多計代のベッドのわきにいて過したのだった。

その一晩で、佐々の全家族のこんどの旅行のむつかしさが、伸子に、はっきり感じられた。伸子をおどろかしたのは、みんなの心もちが、なぜだかひどくくいちがっていて、それがむつかしく入りくんでいることだった。長い長い航海のあげくマルセーユへ上陸したのだから、一家一同くつろいで、しんみりと、この一年半わかれていた間におこったことが話されるだろう。伸子はそう期待した。保のことを話して、多計代はどんなに新しく歎くことだろう。あるいは、伸子をせめるかもしれない。伸子はそれをおそれた。伸ちゃんの顔を見たら、もうわたしは動きたくなくなった、と云われることさえ想像した。船の上に見た多計代は、そのくらい憔悴していた。