轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

「やあ……どうも、手きびしいですね。しかしね、吉見さん、僕は弁解じゃありませんが、ミス、ミセスにかかわらず敬意を表す方のたちなんです」

「――お兄様って――そうね」

ちょっと伏目になって何気なく云う小枝の瞼と口元にあらわれた微妙なかげが、伸子の目をとらえた。素子もそれに気がついた。

「しかしまあ小枝さんは当分安心していいでしょう、和一郎さんが離れまいからね。ここじゃ留守にフランス人のお客に来られるっていう心配もないだろう」

和一郎は、機嫌のいいときの彼一流の、さざなみがひろがってゆくような軟かい微笑を顔の上に浮べて、素子の言葉にゆっくり、

「まあ、そうですね」

とあいづちをうった。

その表情を眺めていて伸子は、近ごろの和一郎というものがわかったように感じた。和一郎は両親から解放されているばかりでない。どっちかと云えばかたくるしい弟であった保から、何かにつけてうけていた圧迫からも自由になったのだと。そして、彼らしい緻密さで、彼にとってはゆるやかにすぎてゆく生のたのしみを味っているのだ、と。その晩、和一郎の口からは一度も彼の専門にふれた話や社会的な事件にふれた話は出なかった。