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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
背景は海だった。ただ白い布に、赤と、碧の照明のかげが落ちて、たくみに揺れる海の水の重く光る感覚が表現されるのだった。ハンブルグの港湾労働者のストライキからとられたエピソードで、港町の労働者夫婦の生活の物語だった。洗煉されて新鮮な舞台装置とリアリスティックな登場人物とはうまく調和していて、そのような舞台の雰囲気は、レーニンの像やC・G・T・Uという大きな四つの頭文字などを労働者階級のたたかいの旗じるしとしてよりも、むしろ斬新な意匠としての効果にまとめているのだった。
伸子は、自分と素子との間にかけている蜂谷良作に、
「I・S・Rって、何の意味なんでしょう」
ときいた。
「僕もさっきっから何だろうと思って見ているんです。Iはインターナシォナールでしょう。――赤色労働組合インターナシォナールという意味だろうかとも思うんだが――国際社会主義革命ってわけじゃないのかな」
「それじゃ、Sの意味がわからないじゃありませんか」
すこし茶っぽくて柔かい髪をおとなしく左わけにして、大柄な体を地味な服につつんでいる蜂谷良作は、素子にそう云われてこまったような顔をしてだまった。