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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

蜂谷の、中共革命についての考えかたは、そういうものだった。蜂谷良作の意見をもう一つつきつめてはっきり云えば、中共の運動は要するに中国の大衆の生活に根をおろしていない一部のウルトラどものまきおこしている騒動にすぎない、ということになるのだろうか。二月の上海のジェネストや臨時革命委員会の成立はコミンタン(国際共産党)の革命あそびにすぎないというのだろうか。そう質問したひとがあった。

そのとき、蜂谷良作の、ぼってりして子供っぽいようなところのある顔の上に、濃い動揺の色があらわれた。蜂谷良作はしばらく伏目になってテーブルの上にある鉛筆をいじっていたが、やがて頭をもたげて、中国には特別な事情があることも認めなければならない、と答えた。近代に入ってから列強の半植民地になっている中国としては、民族自立の要求が強烈なのは当然であって、中共の運動はその点で、独特な足場をもっているとも云える、と。

たまに無産者新聞を見ることがあるぐらいだったそのころの伸子には、蜂谷良作の理論について判断ができなかった。彼の教授らしい質問への答えかたと、そこに感じとられた性格的なものが印象づよかった。