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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

のある自分たちの心もちに翻訳して、蜂谷の当惑を同情した。

「タクシーで行っちゃ駄目ですか」

「遠すぎてね。パリのタクシーは、市内はやすいが、一歩郊外へ出るとメーターが倍ずつまわるから、とてもやりきれたもんじゃない」

「そんなくらいなら、わたしたちのいるガリックへ来て泊った方がよっぽどやす上りだ。――そうしちゃどうです。どんな部屋だって一晩ぐらい、かまわないんでしょう?」

三人は、こんどはゆっくりヴォージラールの通りを逆もどりしてホテル・ガリックのドアをはいった。ここでもカフェーの方はまだあいている。帳場で蜂谷が部屋の交渉をはじめた。

「部屋はないんだそうだ」

「部屋がない?」

そんなはずがあるもんかというおもざしで、素子が番頭を見た。頭のうすく禿げた番頭は、クリーム色のシャツの前に緑色のネクタイをたらして、とがめるように彼を見る素子に向って、両手を左右にひらいて肩をすくめてみせた。

「いくらかほしいんじゃない?」

伸子がその様子を見て素子にささやいた。

蜂谷は、帳場にもたれるようにして、

「アロール・ムシュウ」

と、また新しく談判をはじめた。

「うそじゃないらしいなあ、きょうは土曜日だから、っていうんだ」