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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
ここで蜂谷と話しているようなことは、その中で一応みんなかかれたわけなのだけれども、声に出して、機智くらべになってゆくようなけわしさなしにもういっぺんそれが話せることは、人なつこい伸子にとって、自然で心地よかった。
それにしてもロンドンで会った人たちは、どうしてあんなに伸子を負かそうとするように話す人たちだったのだろう。世界のあらゆる出来ごとについて、イギリスの支配的な階級の常識に準じて判断している自分たちだけが、現代で最も正しい分別をもっている人間なのだ、という風に。――
おのずと考えの流れが一つの方向に動いたように、蜂谷は、
「ロンドンに、いったいどんな連中がいるんだろうな」
と云った。しいて返事を求めないようなその云いかたには、進んでは訊きにくいところもあるが、訊いても見たいという蜂谷の気分が感じられた。
「木村市郎――御存じ?」
「ジェネ※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)にいたんじゃないんですか」
「あのかたは顧問だから、ジェネ※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)には、国際連盟の会議のときだけ御出張なんですって」
木村市郎は、数年前、債務整理のために表面上の破産をした小富豪だった。