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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
「手に下げられるような形の鞄の方がいいと思うんですけれど」
船室で使うスーツ・ケースがいるのかと思ったが、須美子のさがしているのはそういう種類のものでなく、婦人向の気のきいた手まわり入れでもないらしかった。
「何というんでしょう、両方へくちが開く鞄がありますでしょう、すこし深くて――昔からある形だと思うんですけれど」
陳列の間をさがして歩く須美子の足どりにも、眼つきにも、子供売場での須美子とちがった熱心さがあらわれていて、ほかの型ではどうしても彼女の役に立たないことが、はっきりしている風だった。
「きっと、はやりの型じゃないんでしょうね」
根気よく売場を隅々までひとまわりして、おしまいに棚の上の方でやっと須美子の求めているらしい形の鞄が発見された。
「ああ、あれですわ、そうらしいわ」
須美子は、背広を着た若い店員に、その鞄をおろさせた。茶色皮で、どちらかというと野暮くさい両開きの鞄を台の上へおいて須美子は丁寧にうち張りと縫めをしらべ、幾度も鍵のしまり工合をためした。そうしながらも、須美子はその鞄の容積を気にして内外から調べる様子だったが、その結果彼女は、もう一つ同じ型の鞄を買うことにした。