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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

三

もう一方には「男児」と書かれているのも、伸子におもしろかった。パリの市内にも小学校はあったろうのに、伸子は、クラマールへ来て、はじめて、そんな古風な区別をしているフランスの小学校の入口を発見した。

町では一番というカフェーは日曜日の午前中は店をしめていて、テーブルの上に、足をさかさにした椅子が片づけられたままだった。そのカフェーの広場のマロニエの樹の下に、ゆうべ夜ふけまで祭の人を集めて賑っていた小さい舞台が、ひなびた造花の花飾りをつけたままきょうは忘れられている。

町を出はずれて、平らに畑のつづく道になった。その道をすこし行くと、いつかクラマールの森へ入った。森の小道には、クラマールの子供たちもひろい飽きたというように栗がおちていた。伸子がめずらしがって、よろこんで、その栗を拾おうとして体をかがめると、程よく伸びてまばらな樹の間をとおして、すこしはなれたところでシャンピニオンを採っているどっかのお婆さんの水色エプロンの姿が見えたりした。

ムードンの森は、堂々として黒い大きなかつらのように威厳があった。町の生活に近いクラマールの森は、フランスの平民の森だった。