轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

をよんでいる人々の間に、話声はなかった。轟音をたて、パリの地底を北へ北へと突進しているメトロの中で、つめこまれ、かたまって揺られている労働者たちは、無言で、ひとりひとりの生活につながる注意ぶかさで共産党の機関紙をよんでいる。そこには労働者である人々の、階級の朝の光景があるのだった。

朝出の労働者の黒い林と、うちつづく「リュマニテ」の波の下に、背の低い伸子の体がうずまった。動揺につれて隣りの労働者がよんでいる新聞の端が伸子のベレー帽をかすめる。そのたびに伸子は、印刷されたばかりの真新しいインクの強いにおいをかぎとった。

いつも十時ごろのメトロにのって、腹の太くなりはじめた年輩の山高帽の男たちが、云いあわせたように「人民の友」をひろげている光景ばかりを伸子は見なれて来た。そして、「マ・タン」をよむような階級の男女は、大抵自動車をつかって居り、メトロにのるにしても一等車にのり、伸子がいつものっている並等には入って来ないことをも知っていた。だけれども、朝七時のメトロがこんなにも壮観な労働者階級の生活を満載して走っていようとは。――

モンパルナス停車場は、パリ市内へ向ってはき出されて来る通勤人でこみあっているけれども、その時刻にパリから出てゆく人は少くて、伸子と蜂谷良作の乗った車室は、ほとんどがらあきだった。