轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
見なれた部屋着にくつろいだ伸子。顔を洗って来て、ルケアーノフの細君が用意しておいてくれたジャム入りの油あげパンをおいしがって、茶をのみはじめている伸子。伸子のそのこだわりのない食慾や、もうどこへ行こうとも思っていない人間の無雑作さで寝台の上にとりちらされているパリ好みのネッカチーフやハンド・バッグなどは、その部屋に自分以外の者が住みはじめた目新しさと同時に、やっと永年なじんで来た生活がそっくりそこに戻った感じを素子に与えているのだった。伸子は、自分の動きを追う素子の一つ一つのまなざしからそれを感じた。そして、伸子自身も、アストージェンカへ帰って来て、もうどこへ行こうとも思っていない自分を感じるのだったが、素子の視線には、何か伸子の意識の陰翳にあるものをとらえようとしているようなところがある。伸子の、何かに向って、配られている詮索がある。
ひと休みしてからの伸子は荷物の整理にとりかかった。画集のトランクは、ちょくちょくあけて見られるようにドアの左手の壁際へ、いくらもない着換え類は、素子とおもやいに衣裳箪笥にかけた。そして、空になったスーツ・ケースを自分の寝台の下へ押し込んでいると、横がけにかけている椅子の背に両腕をおき、その上へ顎をのっけた姿勢で伸子のすることを見守っていた素子が、