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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
その手すりは大理石だが、それもヌーボー式のぬらりとした曲線で、花の蕊が長くのびたように出来ている。おそらくフランス風を模倣してつくられたものだったろう。けれども、生粋にフランス風なひきしまった線は装飾のどこにも見当らなかった。あらゆる線の重さとその分厚さがロシア風で、この屋敷の豪奢は、はっきり、ロシア化されたフランス趣味というものを語っているようだった。
対外文化連絡のための事務所として、この建物を選定したとき、モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)のその関係の委員会の人々はみんなこの建物を美しいと思い、外国から来るものに、観られるねうちのあるものと思って選んだろう。でも、その人々は、この建物の華麗が、フランス風を模しながら、こんなにもずっしりしたロシア気質を溢らしているという点の意味ふかい面白さ、殆どユーモアに近い面白みを、予測しただろうか。
伸子は、一層興味を動かされて、ホールの左手にある一室に案内された。そこが応接室につかわれていて、もう数人の先客が、いくらか褪せた淡紅色のカーペットの上に自由にばらばらおかれている肱かけ椅子の上にかけていた。