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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

「彼は、非常に決定的に書いていると思います」

伸子は、そう答えた。

「ええ。それは全くね」

「わたしには、読んでわかる範囲にしかわかっていないんだけれども――でも大きな恐慌がおこっていることだけはたしかよ」

「恐慌?」

意外そうに、同時に突然何かの心配がおこったような眼でオリガが伸子を見た。

「どんな恐慌?」

「もちろん、富農のところによ。それは、あきらかでしょう? それから、すべての外国新聞の通信に。――見ていらっしゃい。あのひとたちは『五日週間』についてさえ強制労働が全住民へ拡大したってかいたんです、わたしはパリでそれを読んだわ」

オリガは非常に考えぶかく、自分のひとことひとことに責任をとっているようにつぶやいた。

「それが彼らの習慣なんです」

「オリガ・ペトローヴァ、わたし、思うとおりを云って、いいでしょうか」

「どうぞ」

パというところで一旦区切って、オリガは力を入れてジャーリスタと云った。

「わたしは、富農を気の毒だと思えないんです、それは、わたしが田舎を知らないからじゃないわ。彼らは、もう十分若い指導員たちを殺したし、牛や豚も殺しました」

集団農場化が、ソヴェト権力としてあとへひかない方針だとわかると、それをよろこばない村々で、破壊的な家畜殺しがはやった。