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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
七
パッサージ・ホテルという名の由来は、このホテルをこめてトゥウェルスカヤ通りの角に大きく建っている建物の下に、物産陳列をした勧工場があったかららしかった。おそらくそこへの取引に出て来た各地方の商人たちが定宿としていたのがいまのホテル・パッサージであるのだろう。
陳列場の裏側を見おろす位置にある伸子たちの室の窓の下に、ガラス張りだったパッサージの屋根が破壊されたままで鉄骨をむき出していた。モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)の雪は、きのうもきょうも絶え間なく降って、降る雪は、廃墟の鉄骨の上につもり、更にその間の黒い底知れない穴へ消えてゆく。窓に佇んで降っては消え、降っては消える雪片を眺めていると、伸子は軽いめまいを感じた。狭い往来をへだてた場所では大規模な中央郵便局の建築工事が進行中だった。夜中もプロジェクトールの強い光が雪の吹きだまりのある足場を照し出している。その対照は、いかにも強烈に、きのうときょうのモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)を語っているようだった。
こんど七四番の室のドアをあけた刹那、伸子は、そこがまるで別なところになったような感じがした。