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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
「ふーん、これは、愛嬌があっておもしろいや」
頭文字にはそれを彫りつけることにきまった。一週間たってまた来ることにして伸子たちは店を出た。
「――えらく良心的なんだな」
ぎこちなく並んで歩いている伸子を素子が眼のよこから見ながら、からかった。
「きみだって、プラーグじゃ、ボヘミヤン・グラスは美しいって灰皿だのリキュールのセットを買ったんだよ」
いま、モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)で自分がスプーンを買うのはそれと同じことだと素子はいうつもりなのだった。外国ではそういう買ものもした伸子が、モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)だと何かに気をかねている、素子はそこを辛辣に指摘したいらしかった。しかしプラーグで買った僅の品は、伸子のスーツ・ケースには入っていない。素子がしまって、もっている。それについていうよりも、ともかく伸子にとっては、周囲に動いているモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)の生活と銀のスプーンを買いこむということ。何かわからないけれども絶えずぼんやりした予感のそよぎのうちにある不確定な自分の未来と銀のスプーン。その連関に、何かつよく錯誤しているものが感じられて、気分がおかしいのだった。