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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
の屋上を眺めていた。
この間、この屋上で写真のとりっこをしてたのしんでいる二組の若ものたちがあった。あれから、もう一度、二人づれの青年が屋上にあらわれた。その連中は、何かの書類にはりつける必要でもあったのか、ひどく事務的に、立って、焦点をあわせて、シャッターを切って、そして降りて行った。伸子が、屋上にのぼっている青年たちを見つけたのは、それぎりだった。きっと建物管理委員会が禁じたんだろう。そう素子が推察した。だって、いくら厚いガラスだって、バタバタ、元気な連中にあがって来られたんじゃたまるまいもの。屋上へ出て来るのは、「モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)夕刊」に働いている若者ではなくて、同じ建物の中にある印刷労働者クラブへ出入りする青年たちのようだった。
伸子にすれば、屋上をたのしんでいる若い人たちを遠く高いところから眺めているのもいいこころもちだったし、又きょうのようにガラス屋根をいたわって人影の出ていない屋上を見ているのも気もちよかった。モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)の三つの停車場からは、春の活動のはじまった各地方のコルホーズ協力と見学とのために、工場から、演劇団体から、作家の団体から、毎日何人かずつがグループとなって出発している。