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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

伸子が十四五になって、自分の部屋がほしくなったとき、伸子はひとりで、玄関わきの五畳の茶室風の室がものおき同然になっていたのを片づけた。そしてそこに押しこんであった古い机を、小松の根に蕗の薹の生える小庭に向ってすえた。そして、物置戸棚につみあげてある古本の山のなかから、勝手にとじのきれかかった水沫集だのはんぱものの紅葉全集だの国民文庫だのを見つけて来て、自分の本箱をこしらえた。その中で、ほんとに伸子のものとして買ってもらった本と云えばたった二冊、ポケット型のポーの小説集があるばかりだった。

すきだらけと乱脈とは、いまも動坂の家風の一つとしてのこっている。年月がたつうちに経済にゆとりが出来てきただけ、その乱脈やすきだらけが、むかしの無邪気さを失って、家族のめいめいのてんでんばらばらな感情や、物質の浪費としてあらわれて来ている。伸子は数千キロもはなれているモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)の、雪のつもった冬の夜の長椅子から、確信をもって断言することが出来た。伸子がこのホテルのテーブルの上で、モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)人がみんなそれをつかっている紫インクで、エハガキや時には手紙でかいてやる音信は、先ず多計代に封をきられ、いあわせたものたちに一通りよまれ、それから、なくなるといけないから