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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
多計代にとってこそ、それは、佐々家の将来にもかかわる事件のように思われるにちがいなかった。長男の和一郎は、多計代にやかましく云われて一高をうけたが、失敗すると、さっさと美術学校へ入ってしまった。多計代は明治時代の、学士ということが自分の結婚条件ともなった時代の感情で、息子が帝大を出ることの出来る高校に入ったということに絶大の意味と期待をかけているのだった。その感情からお祝いをあげようという多計代の気もちが、それなり、お祝いを頂く、という保の気もちとなっているところが伸子に苦しかった。辛辣にならないまでも、保は保の年齢の青年らしく、家庭においての自分の立場、自分の受けている愛情について、つっこんで考えないのだろうか。あんなに問題をもっているはずの保が、和一郎と妹のつや子の間にはさまって、団欒という枠のうちに話題までおさめて書いている態度が、伸子にもどかしかった。どうして保は、もっと勝手にさばさばと、たよりをよこさないのだろう。そう思って考えてみると、伸子がモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)へ来てから保は二度たよりをよこしたが、二度ともみんなとの寄せ書きばかりだった。