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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
でも、彼らは伸子たちのためにふさわしいと思えるホテルがどこにあるかしらなかった。果してどういうホテルなら、伸子や素子に適当なのか、それもわかっていなかった。素子は、少女のころから須美子を知っていた。須美子は、素子がある大学のロシア文学科にいたころの教授登坂の娘であったから。しかし、伸子は初対面だった。若くて正直な人々は、パリへ着く伸子たちのために、ともかくできるだけ少く金をつかわせるようにと思ったのだった。
伸子、素子、磯崎夫妻の一行四人は、白い服の小さい女の児を蕊のようにかこんでモンパルナス通までタクシーで来て、エドワード六世ホテルの部屋へはいって行った。表の入口はモンパルナスの通に向っているが、ホテルの部屋部屋は、その大きい石造建物の一部分を縦に狭く区切ってわり当てられているらしく、伸子たちがのぼってゆく階段は暗かった。三階のその一室には、コバルトと黄色のほそい縞の壁紙がはられていて、どこやら古びた紙ばりの箱のなか、という感じだった。一方の窓から西日がきつくさしこんだ。
部屋のまんなかに立ってぐるりを見まわしながら、須美子がおとなしくおかっぱを若い良人に仰向けながら、