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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
女の体にそって柔らかく流れおちる線を、快い抵抗でうけとめるように、その年の女の手套は、西洋剣術用の手套のように高く、さき開きになった装飾のふちをもっていた。この腕環も、柔らかく胸から背へとむき出された女の体の線を、しなやかな手頸で重く強烈にひきしめてアクセントづけようというのだろう。贅沢に暮す女の手頸のほそさ、白さ、しなやかさを逆に強調するように、サファイア色の腕環はほとんど過分な重みをもち、渋さをもち、同時に豪華さをもっている。
しばらく眺めていて伸子が、はげしく興味をとらえられたのは、女の肉体とかその線とかいうものに対するパリのデザイナーの感覚だった。こういうデザインをするのは女ではない。伸子は感興をつかまれてそう考えた。男が、その感覚の上ではっきり女というものを肉体と精神で意識して、その女を活かし、発揮させ、変化あらしめ、より女として表現するために、こういう腕環のような女の装身具は、重々しく、つよく、むしろ女の外から、女の柔かさをひきたてるものとしてつくっているのを、面白く思った。パリの婦人用家具が女の体の曲線にそっていて、装身具の小物類は女の曲線へのアクセントとして対照的な角度から、美しさをひきたてるように考えられている。